養蜂産業振興会の目的と活動紹介

(1)養蜂関連事業の展開

 これまで準備段階に相当する活動として、環境に優しい生物分解性のプラスチック巣脾や、軽量・硬質発泡スチロール製の巣箱の開発、ノゼマ病予防混合飼料への開発協力、ハチミツの産地や蜜源の種類等を少量の一サンプルで同時に分析できるDNA解析の検討・開発、施設トマトのポリネーションへの在来種マルハナバチの利用促進、などを行ってきました。今後もこうしたプロジェクト形式の試験研究を積極的に企画・実行していきたいと考えています。これらの実用化試験は、現場の養蜂家の方々や農家の協力なしには進められません。一緒にやっていただける方を募ることがありますので、よろしくお願いいたします。また、新しいテーマとすべき課題や、問題、アイデアをお持ちの方からの情報も、いただければ一緒に考えたいと思います。

(2)中堅養蜂家への応援

プロの養蜂家向けの適当な技術指導書がない中、できることならそうしたものも作りたいところですが、これは簡単にできることではありません。そこで、海外の新しい技術情報の中から、これはと思うような内容を、会報などで紹介していきたい考えです。

 また、ミツバチの基本的な生態や生物学上の知見を正確に知っておくことは、養蜂場面でも役に立つと思われます。こうしたトピックスを順次、これも会報で連載していく計画です。

(3)花粉媒介用ミツバチの安定供給と蜜源植物の維持拡大

 養蜂家・養蜂業の社会的な貢献は、ミツバチによるポリネーションを通じて私たちの食糧生産に大きく寄与していることであり、そのために必要な数の蜂群を供給することは国家レベルでも求められています。農林水産省はそのため、毎年大きな予算をとって対策に当たっています。しかしその確保のためには、そしてもちろん採蜜用の群のためにも、蜂が健康に、よく育つ飼養環境の確保が必須です。

 そこで最も重要なのが、十分な量の蜜・花粉源植物です。しかし残念ながら我が国の蜜源植物は、実質的にも統計上も減ってきており、これが何とかしなければならない大きな課題です。一方で休耕田や耕作放棄地、伐採後放置されたままの林地は広大な面積に及んでいることから、これらを蜜源・花粉源の畑地、または森として利用していく可能性は十分考えられるはずです。

 この課題の解決に向け、養蜂家の努力に加え、環境改善の趣旨から一般の方たちの理解も得つつ、「蜂や訪花昆虫に優しいガーデニング」や、「少し長い目で見た蜜源の森作り」の具体的な提案をしていきたいと考えています。

(4)蜂群の健康管理

この20年くらい、セイヨウミツバチ養蜂の最大の問題はミツバチヘギイタダニでした。このダニが日本で発見されたのは1950年代で、その後広く寄生は認められるようになりましたが、今ほど深刻な害ではなかったと言われています。このダニが吸血を通じて多くのウィルス病を媒介していることが、DNA診断によりわかるようになりました。ウィルス病が増えた原因としては、国外から新たなものが入ってきてしまった可能性も考えられますが、移動や飼育環境の悪化、農薬への暴露などが原因となる諸種のストレスにより、ウィルス病が発症しやすくなっていることも大きいように思われます。

 こうした状況の中、ミツバチの免疫力を高める可能性がありそうな、いろいろな方法が試されていますが、「薬、サプリメント漬け」には疑問もあります。ヒトにとって食が大切なように、ミツバチでも、偏らない、いろいろな種類の花粉、花蜜を利用できることが、免疫力を上げるのに役立つとの報告も発表されています。ミツバチの望ましい食生活について、皆様と一緒に考えていければと思っています。

(5)試験研究の成果物の販売

 私たちは営利事業は考えていませんが、会員へのメリットを考え、試験研究による成果のうち、特に巣箱や巣脾その他の蜂具などを、会員に優先的に、あるいは有利な価格で販売することはしたいと思います。これらの収益は、会報の発行や事務経費に当てます。


(6)会報の発行

 養蜂家の方に役立つ情報を会報でお伝えしていきます。